《ゆるやかな認知ーボリジといと》
木枠、布、膠、油彩 2021 年…

いとちゃんは野良猫だった。家に来たときは痩せ細り、歯は変な方向に曲がっていて目が見えなかった。病院に連れて行くと目は治るかもしれないらしく手術をすることになった。手術は無事に成功し、目は見えるようになった。きれいな緑色の目をしていた。いとちゃんは
変わった猫で他の猫に威嚇をしたことがなかったし、庭に出してもどこへも行かずに庭の芝生の上でごろごろと日向ぼっこをしていた。
 2さいを過ぎた頃、急に体調が悪くなり病院に連れて行くと腎臓がかなり悪い状態だった。それから2日に一回病院で補液をしに連れて行ったが2日おきに病院に連れて行くのは大変なので家ですることになった。初めは痛くてなくいとちゃんの背中に針を刺すのが辛かった。腎臓は一度悪くなると良くはならない。補液と薬のおかげで安定していた時期もあったがゆるやかに悪くなり、いとちゃんは痩せていき自分の毛をむしり、トイレにうずくまるようになった。ついには水も飲まなくなりまともに歩けなくなった。朝、病院に連れて行き点滴をしてもらうことになった。夕方迎えに行き、家に帰るとふかふかの布団に寝かせた。しばらくしていとちゃんは息をしなくなった。3さいだった。
この日は暖かく晴れていたので病院に連れて行かないで大好きな庭で寝かせてあげればよかった。
1年間も最後まで針を刺し続けて痛い思いをさせてしまったことを後悔した。