〈庭づくろい/Mending Garden〉 
2025年〜

ねこの毛づくろいを眺めるのが好きで、見ているうちに気持ちがほどけて眠くなってしまうことがある。「毛づくろい」という言葉は、英語にするとあまり良いイメージのない言葉に感じるが、ねこと暮らしていると、実際は毛並みを整えたり気持ちを落ち着けたりと、そのほとんどは自分のための営みだとわかる。
庭仕事や畑、絵や料理など、手やからだを動かして自分のために何かをつくることもまた、毛づくろいのようなものでもある。
とりわけ草花と向き合う時間は、急激な体力と精神の落ち込みという消極的な理由から始まったものだったが、土を耕し、種をまき、苗を育て、収穫し、種をとる。どの過程のなかにも、難しさを感じると共に小さな発見と幸せを見つけることができた。 そうやって、その日一日を生きるために続けていたことが、今に、この場所につながっている。

ここに植えた草花は、全て香りを楽しんだり、お茶や料理に使うことができる。もう少し成長したら美術館に来た人が立ち止まり、香りにふれてみたり、少しだけ摘んでいったりするかもしれない。
とても小さな庭だけれど、そうして人が関わっていくうちに、庭も人も少しずつ、つくろわれていくのではないだろうか。このささやかな営みはきっかけにすらならないかもしれないが、いつか、それぞれが、自分にとっての生きる糧のようなものを見つけてもらえたらうれしい。

榎本浩子

 

〈庭づくろい/Mending Garden〉
佐賀大学美術館の緑地を使用した誰でも共有できる小さなガーデニングプロジェクト。

鑑賞用としてだけではなく、共有できる庭(share garden)として、自由に収穫いただくことができます。
詳細は佐賀大学美術館のホームページをご覧ください。
https://museum.saga-u.ac.jp/project/gardening