アーツ前橋でのスタジオ・サポート・プログラムを終えて

終わってから少し時間が経ってしまいましたが、2020年10月〜11月までの2ヶ月間のアーツ前橋でのスタジオ・サポート・プログラムについて書いてみようかと思います。

今回のスタジオ・サポート・プログラムは本来ならば海外の作家が竪町スタジオに滞在して制作を行う期間だったのがコロナウィルスの影響でそれができず、また県外から招聘というのも難しいこのご時世ということで今年度は県内作家への支援を行うプログラムになったそうです。
私自身は2020年の3月ごろ、コロナウィルスの影響で海外に行く予定が白紙になり、その後の予定もまったく何もないといった状況になりました。そこまでがんばって準備していたことがすべて無駄になり、がんばっても仕方ないんじゃないかという気持ちにもなってしまい、その時は焦りだけだったのがだんだんと暗闇に入っていくような感覚になりました。緊急事態宣言もありずっと家にいる生活から徐々に外出できるようになり少しコロナも落ち着いたころ、夏に2週間ほどアーツ前橋の廣瀬智央さんの展覧会の関係で、毎日のように廣瀬さんととりとめのない話をしたり、一緒に展示に使っていた大量のレモンの種を砕いたりしていました。廣瀬さんはその時コロナウィルスが蔓延していたイタリアから来て展覧会終了後もすぐにはイタリアに戻れなかったり大変な思いをしているのにも関わらずいつもこにこしていて、元気で、その元気を分けてもらえたこともあって少しづつ気持ちが楽になっていきました。展示に使っていた苔ももらいました笑

 

10月からは竪町スタジオで制作ができることになり、2ヶ月間はほとんど毎日スタジオで制作する日々でした。自分の制作場所は欲しいと思いながらもいい場所がなく、未だに制作できる広い場所を持っていない私にとってはありがたいプログラムでした。田舎だと逆に制作場所を確保することが難しいのかもしれません。地域によってはアーティストが集まって共同で場所を確保したり、行政で提供しているところもあったり様々ですが、群馬県ではアーティスト向けに借りたり貸したりの文化もなければアーティストも多くない、誰かとシェアすることが難しい場所だと感じています。
2ヶ月間はどんな制作をしていたかというと、2019年に前橋市内で開催した展覧会「ソウウレシ」で、作品を発表するにあたり、《受けとめきれない》という作品を制作しました。これは耐えられないくらい気持ちが落ち込んでしまった時期に、体が思うように動かなくなったり、皮膚に蕁麻疹が出たり様々な影響があったときに自然と植物を育てたり、その植物を使って何かを作ったり料理をしたりしたことで少しづつ自分で自分の傷を修復していった話を作品にしました。それからは実際に体に使っている傷の修復作用のある植物や蜜蝋などを素材として使って制作をしています。竪町スタジオでもそれらの素材を使って制作をしたいと思い、蜜蝋と植物の彫刻と傷の修復作用の成分がある植物、カレンデュラを種から育て、咲いた花を乾燥させておいたものをオイルで成分を抽出し、それを使って石鹸の彫刻を作りました。

実はこのカレンデュラは「ソウウレシ」で会場だった元酒蔵で文化財の旧本間酒造の庭に植え、会期後に自分の庭に移して育てていたものです。2ヶ月という期間で目標100個を目指していたのですが、石鹸を手作りするとかなり時間がかかってしまい60個ほどしか作れませんでしたが、この期間中にya-ginsで制作中の作品を見てもらうための個展とmapでも展覧会に参加する機会をいただき、充実した2ヶ月となりました。

 

コロナ禍でこういった機会を与えてくださったアーツ前橋と担当学芸員さん、ya-gins、mapのみなさんには感謝しています。ありがとうございました。

 

2020.12.17